<金口木舌>名護は恋のまち


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「名護」と聞いて思い浮かべることは何だろう。桜や沖縄そばを思う人もいれば「辺野古」といったキーワードが頭に浮かぶ人も多いのではないだろうか

▼それらを押しのけてこれから先、名護は「恋のまち」と言われるかもしれない。そんな予感のする映画が完成した。ことし1月に名護市を中心に北部各地で撮影された「がじまる食堂の恋」(「風と海と恋と」を改題)がそれ
▼登場人物と物語の魅力もさることながら、画面に切り取られたやんばるのまちが美しい。海や空の青、ひんぷんガジュマルやフクギ並木の緑、まちなかの路地、見慣れたはずの光景に新鮮な感動があった
▼台風8号の余波が残る中、東京から駆け付けた大谷健太郎監督を囲んだ試写会が9日あった。見終わった後、自然に沸き上がった拍手がまちの人の期待を表していた
▼商店街の衰退、出口の見えない基地問題、名護に限らず沖縄の至る所で似たような状況がある。この空気、一言で言うなら「閉塞感」か。打破するのに必要なのは地元の行動力と応援する外の力だ。完成した映画はその両方が備わっている
▼うれしかったのは監督らが挙げた「一体感」という言葉。プロのスタッフと市民が一緒に作り上げたとの自負がある。映画は9月に公開される。劇場でぜひとも確かめてほしい。まちと人の魅力が存分に詰まった大人の恋物語を。