<金口木舌> 官僚の骨壺の中身は


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 「何十年ぶりかのお墓開け清掃、孫たちが『中の骨つぼ空っぽだったよ』と言った」。本紙オピニオン面に載ったアンサーるり子さん(北中城村)の投稿だ(2013年11月28日付)

 ▼骨つぼには、祖母が最期を遂げたと思われる場所で拾った石を入れたという。遺骨さえなく、生きた証しが1個の石でしか示せなかった沖縄戦の事実が悲しい
 ▼いま、墓まで持って行くと言えば「秘密」とされる。さてさて関わった官僚はそうするつもりなのか。沖縄返還をめぐる日米の密約文書のことである。最高裁は西山太吉元毎日新聞記者らの上告を棄却し、文書の開示を認めなかった
 ▼米国ではすでに公開されている文書だ。返還交渉を担当した吉野文六元外務省アメリカ局長も日本側にコピーがあったと証言した。しかし国は「ない」と主張し続けた。「ない」と言うなら誰がいつ廃棄したのか明らかにするのが国の義務だろう。密約によって多くの税金が使われたのだから
 ▼菅義偉官房長官は再調査を「考えていない」と素っ気ない。政府や官僚にとって都合の悪い文書は捨てればよいという前例を最高裁が担保した格好だ。国民は国が何をしたかを知ることができなくなる
 ▼政治家や官僚の骨つぼを開ければ国の秘密がゴロゴロなんて、冗談にもならない。心あるならば秘密は墓場でなく、国民の前で明らかにしてほしい。