<金口木舌>自ら作り食べる喜び


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 人気アニメ「ドラえもん」の全米放映が始まった。現地版では、どら焼きの大食い場面を短くし、おやつを果物に変える。「健康的な食生活の推進」という子ども番組の基準があるからだ

 ▼米国では子どもの肥満が深刻化している。17%を占め、30年間で3倍に増えた。学校給食の乱れも一因だ。ジャンクフードや砂糖入り牛乳が大半で、フライドポテトを野菜扱いする学校もあるという
 ▼これを改善しようと、ミシェル・オバマ大統領夫人が子どもの肥満防止に力を入れている。名付けて「レッツ・ムーブ」キャンペーン。給食の塩分・糖分・脂肪分の削減、企業には全加工食品へのカロリー表示を求める
 ▼日本でも食育が盛んだ。効果の著しい活動が「弁当の日」だ。年に数回、食材の買い出しから献立、調理、片付けまで、弁当作りを子ども自身がこなす。親は手伝わない
 ▼食への関心、作り手への感謝、自立心の芽生え、親子の対話促進など、目に見える変化があるという。2001年に香川の小学校で始まり、今や全国の小中高大学1300校にまで広がった。発案者の元校長・竹下和男さんは「生きる力を育み、家庭や学校、地域が変わる」と説く
 ▼あすから夏休み。親子一緒に一から料理する生活体験をしてみてはいかが。ドラえもんの便利な道具とは違い、手間をかけて自ら作る喜びを再発見できるはずだ。