<金口木舌>じゃんがら会と沖縄


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 「かさじぞう」や「鶴の恩返し」といった日本の昔話には、恩返しを主題にした物語が多い。一つ一つの物語に「おかげさま」「お互いさま」の精神が宿っている

 ▼東日本大震災の後に、福島県などから避難してきた人たちの集い「沖縄じゃんがら会」が1日、浦添市に事務所を開設した。会員の情報交換や就労情報を提供する一方、特技を持つ会員が講師を務める講座も開く。県民にも参加を呼び掛けている
 ▼講座はヨガ、似顔絵教室などと多彩だ。好奇心をそそられる。事務局長の関根美智子さんは「沖縄の方々にお世話になっているので、支援されるばかりではなく、できることで恩返しをしたい」と語る
 ▼東日本大震災から約3年4カ月。会によると、被災地と沖縄とで家族が別れて暮らしている人からは「離れ離れは3年が限界」という声も増えてきた
 ▼新学期を控えた3月に、沖縄から福島へ引き揚げた人も多い。市町村による避難者対象の緊急雇用が3月末で終了した所もあり、4年目に入り、さまざまな課題が浮き彫りになりつつある
 ▼それでも、つらいことばかりではない。会の今江加奈子さんは「沖縄に来たからこそ、人の温かさに触れることができた」と言う。お互いさまの気持ちを大切にしたい。異なる生活文化や特技を持って避難してきた人たちの存在は、沖縄社会をも豊かにするはずだ。