<金口木舌> ことしも期待、球児のドラマ


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 1992年春、開会式直後の第1試合。まだ熱気も控えめな甲子園のスタンドが一つの空振りにどよめいた。打席に立つ左打者の豪快なスイングは、その直後に出たバックスクリーンへの本塁打より鮮烈な印象を残した

 ▼それが巨人、ヤンキースで活躍した松井秀喜さん(当時星稜高)だと知ったのは試合の後。プロ注目のスラッガーの鋭い一振りは、居並ぶプロのスカウト陣をうならせるのに十分だった
 ▼なぎなたやハンドボールをはじめ、県勢が活躍した全国高校総体が終盤を迎えるのと入れ替わるように甲子園が始まる。いよいよ夏本番の到来を感じさせる。果たしてことしはどこが栄冠をつかむのか
 ▼もちろん県代表の沖縄尚学にも注目したい。昨秋は神宮大会で全国の頂点に立ち、九州・沖縄でも無類の強さを見せている。春のセンバツは8強、夏も優勝候補の一角を占める
 ▼ただ勝ち負けだけにこだわらず、一つ一つのプレーにも注目したい。スラッガーの一振り、剛球投手や頭脳派のピッチング、見どころは幾つもある。松井さんのように一振りでうならせる選手の登場を期待したい
 ▼沖縄尚学の初戦は17日。台風11号の影響で開幕が遅れたのは残念だが、待つ間にも期待と夢は膨らむ。ナインの勇姿が楽しみだ。ことしも白球を追い掛ける球児たちのプレーとドラマをしっかりと心に焼き付けたい。