<金口木舌>マナー緩和ではない


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 「規制緩和」と聞くと、自由度が高くなるというイメージから手放しで喜んでしまいがちだ。だが、立場の違いで賛否両論巻き起こることもある。2002年に施行された改正道路運送法で、新規参入や増車を原則自由化したタクシーがいい例だ

 ▼9月1日から旅客機の離着陸時にも地上と通信しない「機内モード」に限ってスマートフォンなどの電子機器が使えるようになる。この規制緩和には喜ぶ向きも多いだろう。個人的にはデジタル音楽プレーヤーが常時使えることがうれしい
 ▼近年の研究で、国内旅客機の多くは電子機器の発する電波に耐性を持つと確認されたことが解禁の大きな理由だ。航空各社が機内でWiFi(ワイファイ)に接続する有料サービスを拡大している動きとも無関係ではないだろう
 ▼解禁によって上昇中、窓越しに広がる街並みなどをデジタルカメラで撮影することもできる。シャッター音や離着陸時のシートベルト着用の徹底など、周りの乗客により気を配る必要性が生じそうだ
 ▼将来的には機内で通話やメールもできるようになるかもしれない。だが、仕事の電話を気にしないで済む時間が減ることを考えると、複雑な気分にもなる
 ▼ともあれ、通話ができるようになっても狭い空間での利用はマナー違反になる。規制は緩和されてもマナーが緩和されるわけではないことを肝に銘じたい。