<金口木舌>南米ウチナーの「麺道」


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 食通ではないが麺類にはこだわる。もちろん沖縄そばが筆頭に上がる。休日には食べ歩きを楽しむ。蕎麦(そば)もいい。真っ昼間から日本酒をなめ、麺をすする。東京で暮らしたころの、月に1度のぜいたくだった

 ▼ラーメンは専らインスタント派で、カップ麺よりも袋麺を選ぶ。それも生麺のような味覚が売りの高級志向より「安くて、うまい」が取りえの大衆志向の商品が良い。庶民の味の王道といった趣がある
 ▼有名ラーメン店には独特の流儀がある。そろいの作務衣(さむえ)やTシャツで店内を動き回る店員は求道者のよう。ブログで濃い口のうんちくをつづる店長もいる。テレビのバラエティー番組から「ラーメン道」という言葉も広がった
 ▼南米に渡ったウチナーンチュも「麺道」を築いた。入植100年を祝ったブラジルのカンポグランデでは沖縄そばが名物で、毎年「SOBAフェスティバル」を開いている。味が気になる
 ▼入植60年を迎えたボリビアの沖縄移住地コロニア・オキナワはパスタの生産に力を入れる。ブランド名は「フィデオス オキナワ」で、直訳すれば「沖縄麺」。ボリビア発のパスタが沖縄を発信している
 ▼南米でウチナーンチュが麺を作り、食べている。苦難の歩みと、その地で育まれた食文化が独自の歯応えを生んでいよう。湯気の向こうにはウチナーンチュが沃野(よくや)に切り開いた一筋の道が見えてきそうだ。