<金口木舌>平和と経済自立を願う「波」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2人乗りのシーカヤックが気持ち良さそうに風を切って海面を進む。親子、友人同士が息を合わせてパドルをこぐ。だが、その先には非日常的な様相が広がっていた

▼名護市の大浦湾で17日に開かれた第2回わんさかシーカヤック大会と同じ時間帯、新基地建設に向けた海底掘削調査のためのスパット台船が設置された。大会会場から離れてはいたが、動きがあったことは見て取れた
▼辺野古の海では防衛局や海上保安庁の異様な「支配」が続く。福岡の70代主婦は愕然(がくぜん)とした。「まるで外国の侵入を防ぐ戦場のよう。本当にここは沖縄の海ですか」。非日常がまかり通る辺野古の日常-。観光客が驚くのも当然だ
▼新基地建設に反対するのは特定の自然保護団体や平和団体だけではない。数年前まで思っていても口にしなかった経済界からも反対の声がはっきりと聞こえるようになった
▼水産加工業イトサンの大城忠社長は「埋め立てはモズク産業を破壊する」と警鐘を鳴らす。金秀グループの呉屋守将会長は補償依存からの脱却に沖縄の将来を描く
▼米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を起点に勢いを増す「平和への願い」と「経済発展への願い」。二つの「願い」は幾重にも輪を描く波紋となり、辺野古の海から大きく広がっているように見える。国の強硬姿勢に遭っても「願い」を乗せた波紋が消えることはない。