<金口木舌>「生命の設計図」に向き合う


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 那覇の高台から北に目をやれば、恩納岳の尾根がくっきり浮かぶ。西には慶良間諸島の輪郭が際立つ。盛夏を過ぎ、遠くの景色がよく見えるようになった

▼この時期は風の弱い日が多く、空気中に漂う海水からくる塩分量が少ないため、視界が遠くまで広がるのだという。どこまでも見えるに越したことはない。だが世の中、そうとは限らないこともある
▼「恋は盲目」の時期を過ぎ、相手の欠点が見えるようになると「こんなはずでは」とこぼすのは世の常。「結婚後は片目をつぶった方がうまくいく」。仲人の決まり文句には一理ある
▼生命の設計図を「見える化」し、将来の病気リスクを予測する遺伝子検査への関心が高まっている。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが昨年、乳がんリスクの高い遺伝子変異を持つとの結果に従い、予防のため乳房切除術を受けて話題になった
▼個人向け検査ビジネスも拡大している。病気リスクが分かれば、健康意識が高まり、予防につながることも期待される。だが、前向きな人だけではない。知ってしまうことで不安を抱え続ける人もいるだろう
▼検査結果は可能性であって確実ではない。検査ビジネスの拡大を懸念する専門家も多い。そうはいっても、誰しも将来を見てみたいと思うもの。怖いもの見たさも遺伝子のなせる業。要は結果を冷静に判断できるかだろう。