<金口木舌>チーム力に学ぶ


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 元テニス選手で現在は解説者やタレント活動もする松岡修造さんは現役のころ、練習以外でも自らを律していたそうだ。レストランに入ったら「5秒以内に注文を決める」というのもその一つ

 ▼このエピソードを聞いた時は笑ったが、一流選手ともなれば時速200キロを超えるサーブが飛んでくる世界。コンマ数秒の判断が勝負の分かれ目になる。一瞬で決断する力を磨くためと聞いて納得した覚えがある
 ▼そんなぎりぎりの勝負をする世界で、錦織圭選手が全米オープン日本人96年ぶりの4強という偉業を達成した。一時は世界ランキングで日本人最高の9位に入り、ことし春には苦手の赤土コートで優勝した。決勝進出なるか楽しみだ
 ▼快挙を支えるのは本人の才能と努力はもちろんだが、「チーム錦織」と呼ばれるコーチ陣の存在も見逃せない。技術面だけでなくメンタルからヨガ、報道対応まで10人以上が錦織選手をベストの状態で送り出すために奮闘する
 ▼もう一つ忘れてはいけないのが10代で米国へ修業に送り出した両親の理解だ。「個」の力を伸ばすため、最大限の支援をするという教育方針が才能の開花につながった
 ▼才能と努力、そして人の和。三つがうまくかみ合ったときに最大の成果が上がる。それはスポーツに限らない。レベルは違っても錦織選手を支える「チーム力」に見習うべきことは多い。