<金口木舌>スクリーンに映るやんばる


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 各地で繰り広げられている豊年祭が「伝統文化の秋」なら、子どもたちの歓声を耳にして感じるのは「スポーツの秋」か。それぞれの趣味を楽しむ季節が少しずつ近づいている

▼多彩な秋に映画「がじまる食堂の恋」で、やんばるの魅力に浸ってみてはいかがだろう。切ない恋愛模様はこの時期によく似合う。20日から桜坂劇場をはじめ全国で上映される
▼ロケ地は名護市を中心にした本島北部。タイトルからして分かるように「名護」を示す言葉は数回しか出てこない。それが、かえって「名護」を強く印象づける
▼名護市のシンボル「ひんぷんガジュマル」や名護岳、久志の浜辺などなじみの場所はもちろん、日差しのまぶしさやそよぐ風など、自然を意識した映像をちりばめた。見慣れた景色の新鮮さは角度を変えて見た、やんばるの魅力そのものだ
▼大ヒット作「NANA」の監督を務めた大谷健太郎氏がメガホンを取った。「目に見える多くが印象的」と話す大谷監督は、人気テレビ番組が終了した時の空虚感を指す「あまロス症候群」をもじり、撮影後は「名護ロス」を自認するほど名護のとりこになった
▼県内企業や通り会などが製作を担った。映画に観光への効果を期待する。映画をきっかけに住民が足元の魅力を感じ取り、しっかり育てていくことが必要だ。映画はその大切さを語り掛けている。