<金口木舌>トクホでトホホにならないために


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 「お墨付き」とは江戸時代に幕府や大名が臣下に与えた文書をいう。墨で花押(かおう)を書き入れたことから、そう呼ばれた。お上が保証するのだからと、庶民は信じ込んでしまいがちだ

▼現代のお墨付きと言えば「トクホ」だろうか。人が万歳するマークでおなじみの特定保健用食品だ。トクホと称しただけでお茶やコーラが爆発的に売れる。企業がありがたがる表示だ
▼だが、ノンアルコール飲料までとなると、首をかしげてしまう。消費者庁は近くトクホとして認める方針らしい。消費者委員会の「不適切」という答申を覆しての許可だ
▼規制緩和で増え続けたトクホは、今や1118品目。過去には食用油から発がん物質が確認され、返上した例もある
▼岩田健太郎医師は著書『「リスク」の食べ方』で「トクホのお墨付きが付いていても、科学的に信用できる食品はカルシウムと葉酸だけです」と言い切る。トクホには3種類あり、医学的・栄養学的に効果が確立しているのはこの2成分の「疾病リスク低減表示」だけで、残りの「規格基準型」「条件付き」はデータの吟味が不十分と指摘する
▼国立健康・栄養研究所も「トクホの利用だけでは十分な健康は手に入れられない」と注意を促している。お墨付きへの過信は禁物。トクホに頼り過ぎてトホホな結末を迎えないためには、バランスのいい食生活こそが一番だ。