<金口木舌>失敗をどう生かす


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 失敗とは一つの要因で起こるのではなく、複雑な階層性が絡み発生するのがほとんどだという。工学博士畑村洋太郎氏の著書「失敗学のすすめ」(講談社文庫)は、過去の事例分析を通して失敗の実相を明らかにする

 ▼複雑な階層性とは個人の無知、誤判断などがピラミッドの底辺にある。さかのぼれば組織運営の不良、企業経営の不良、そして行政・政治の怠慢、社会システムの不適合-があると指摘する。これらが絡んで失敗は発生するという。医療ミスで、病院が管理・経営ミスなど、本来あるのに認めず、一看護師に責任を負わせる-といったケースだ
 ▼翻って、うるま市の中学校で発生したいじめ問題である。気付いたのが校長宛てに匿名で届いた投書という。それ以前に現場の教師は兆候を見抜けなかったか
 ▼発覚後の対応もいただけない。被害生徒の親にいじめを通知したのは、投書が届いて2週間後という。しかも加害生徒が被害生徒へ謝罪する意思を伝えたのに阻んだことも明らかになった
 ▼被害生徒の親は「学校も市も隠す方向に動いているとしか見えない」と言う。確かに学校側の対応にはどうにも釈然としないことが多い
 ▼事前事後で学校側に問題に向き合う姿勢が見えない。畑村氏は「大切なのは失敗しないことではなく、正しく向き合い、次に生かすこと」と記す。生徒にとっても最良の教育である。