<金口木舌>理想郷に近づくには


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 きょう21日は宮沢賢治忌。自然を尊び、自己犠牲を惜しまない作品を生んだ背景には母が教えた次の言葉があったという。「人というものは、人のために何かしてあげるために生まれてきたのス」

▼研究者によると、父が反発の象徴だったのに対し、賢治にとっての母は安らぎの源だったとされる。賢治が夢見た理想郷「イーハトーブ」はそんな優しさに包まれる世界だったのかも
▼そうした母親像と対照的なのは現代の「妻が強そうな県」アンケートの結果(19日付30面)だ。圧倒的多数を占める大阪と群馬のイメージは「ヒョウ柄オカン」の「マシンガントーク」に「かかあ天下」
▼5位の沖縄は「男性が穏やか」「女性が働き者」というのが理由だそう。確かに清明祭、旧盆などの年中行事では母や妻が働く姿が思い浮かぶだけに「穏やか」は褒め過ぎではないかと疑いたくなる
▼県出身バンド「かりゆし58」の「アンマー」は夜が明ける前から働き、包容力のある母親への感謝を歌っている。聴く度に思うのは、沖縄の女性は「強そう」でなく頼りない男のため「強くならざるを得ない」のではないかということ
▼いつも女性に頼ってばかりではいられない。賢治の母が教えたように男女に限らず、人が共に支え合う社会こそが「イーハトーブ」に近づく一歩ではないか。まずは全ての女性に感謝を。