<金口木舌>医療の公益性とは


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 江戸時代の医薬学者、貝原益軒の養生訓に「医は仁術なり」という言葉がある。分け隔てなく人を思い、救う。自らの利得ばかりに心を傾注してはならないことを説く。その精神は今も戒めの言葉として輝きを失わない

 ▼医療法は医療法人の非営利性を規定する。原則として医療法人は剰余金の配分を禁じる。つまり利益は病院運営の基盤を強化するなど医療の質の向上などに充てねばならない
 ▼宜野座村で北部病院を運営する医療法人ほくと会が、医療法に反する貸し付けをしていたことが判明したのは昨年7月のこと。貸付先は、ほくと会の理事長が兼務していた営利法人だった
 ▼医療法人の理事長が営利法人の代表者を兼務していたことで、県は「非営利性」に抵触する疑いがあるとみる。県は今月、昨年7月に分かった虚偽の監査報告書作成の疑いについて那覇地裁名護支部に通知している
 ▼医療法は医療法人に対し地域医療の重要な担い手としての役割を果たすよう求めている。地域住民にとって重要な医療機関が疑われるようなことがあってはならない。医療法違反が疑われてから1年余たつが、県の改善指導は今も続く
 ▼「医療とは何か」について、あらためて考える機会にしたい。米国流に株式会社が運営する医療機関も設立されるご時勢である。貝原の言葉の重みをあらためてかみしめる。