<金口木舌>音のある風景


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 松島みどり法相が参院本会議場で身に着けた赤い“ストール”の是非をめぐり、参院議会運営委員会が紛糾した。アントニオ猪木議員の赤いマフラーの際もそうだったが、論戦ではなく服装で注目される国会はいかにも寂しい

▼クラシック音楽の演奏会では、かしこまった服装でとの暗黙のルールがある。場に応じた装いは常識だが、クラシックは「敷居が高い」と言われる要因の一つになっているのかもしれない
▼固定ファンが多いと思われがちなクラシック界に、新しい風が吹いている。親子対象の鑑賞会、曲の解説を交えた演奏会などが県内でも開かれるなど、ファン層の広がりを目指す活動が盛んだ
▼那覇市内で月1回開かれる「楽友協会おきなわ」主催の「ゆたしくクラシック」は公演時間が1時間で気軽に楽しめる。公演ごとに会社員、親子連れなどと対象を絞り、プログラムにも工夫を凝らしている
▼楽友協会の会員は「音楽に親しむ入り口にしたい」と意気込む。演奏家自らが質の高い芸術を多くの人に届けるための方法論「アート・マネジメント」を学び、観客のニーズをつかみ、広報に力を入れる動きも活発化している
▼経済が停滞すると芸術活動は脇に追いやられがち。だが芸術に親しむ機会は心躍る時間を与え、暮らしに彩りを添えてくれる。音のある風景は、豊かな地域づくりの原動力にもなる。