<金口木舌>「クロンビ」のメッセージ


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 「これがずっと続くの?」。2年前、沖縄の基地建設反対運動を追ったドキュメンタリー映画「ラブ沖縄@辺野古・高江」が東京の記者研修で上映された。鑑賞中、隣の地方紙記者がつぶやいた

▼ヘリパッド建設が進む東村高江などでの住民と警察らとのぶつかり合いを延々映し出す。先の記者は映画の内容を指したのだろうが、この光景が今も延々続くのが沖縄の現状だ
▼数で押さえ込み、台風通過後など住民の不意を突き作業を進める公権力。住民を鼓舞する歌や踊り。こちらは新基地の建設作業が進む辺野古のことではない
▼韓国済州島の江汀(カンジョン)村で海軍基地反対運動を8年続ける住民を追ったドキュメンタリー映画「クロンビ~風が吹く~」の一シーンだ。その光景は驚くほど辺野古と重なる。来沖したヤン・ユンモさんやソン・ガンホさんの姿も
▼辺野古と違うのは江汀では逮捕者が次々と出ることだ。ユンモさんらは沖縄では基地建設に反対する県民が多いと、うらやましがった。まさにそこが辺野古で公権力の行動に歯止めをかけている一因だろう。横暴を許さない県民一人一人の目が大切だ
▼映画終盤、建設が着々と進む江汀の基地を住民が人間の鎖で包囲する。上空から捉えた住民の表情は明るい。「われわれが諦めるまで、敗北はない」。メッセージは県民や辺野古で座り込む市民の力になる。