<金口木舌>仲尾次区の「顔」


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 名護高と名護商工高の生徒23人が、住宅街のブロック塀に描いた壁画が名護市仲尾次区にある。躍動感あふれる棒術や踊りなどの伝統行事で彩られた壁画は完成から約5カ月がたち、町並みにすっかり溶け込み、新たな「顔」になっている

▼先日の豊年祭でこの壁画がひときわ輝いた。大通りから会場の公民館まで両側100メートル余も続く壁画は訪れる人たちを引き付けた。多くの人が立ち止まって見入るなど、宴の盛り上げにも一役買った
▼120年余続く仲尾次区の豊年祭には、多くの人が詰め掛ける。たいまつを使った独特の「谷茶前」やウチナーグチ満載の現代喜劇などの演目が、近隣町村の人たちも呼び込む
▼伝統文化同様、海や山などの自然も地域を代表する「顔」になる。仲尾次区の目の前に広がる羽地内海もその一つ。観光スポットになっている嵐山展望台から見渡す絵はがきのような眺めは、見る者を癒やしてくれる
▼地元の漁師が「宝の海」と呼ぶこの海は、乱獲や赤土による環境悪化などで漁獲量が減っている。来年計画するクロマグロの養殖に向けても、環境の改善は重要なテーマだ
▼「働く場所を確保し、若者の定住につなげたい」。金城富久羽地漁協組合長は、海の資源を生かした雇用創出を切望する。地域の新たな「顔」を創り出すのも伝統、自然、食など独自の魅力を絶やさないことから始まる。