<金口木舌>サーターアンダギーと新島さん


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 サーターアンダギーにも容姿の良しあしがある。チューリップの花弁のように割れて生地が見えるものが美形に属する。低めの温度でゆっくり揚げれば、油鍋の中に香ばしいサーターアンダギーの花が咲く

 ▼4日亡くなった料理研究家の新島正子さんから琉球料理の話を拝聴したのは1992年の春のこと。「サーターアンダギーも立派な琉球料理」と語っていたのが印象に残っている
 ▼素朴な菓子にもウチナーンチュの知恵が生きている。「生活の知恵を絞って料理は作られてきた。ただ残っているわけではない」と力説しておられた。サーターアンダギーも知恵のたまものである
 ▼絶えつつあった琉球料理の継承に力を注いだ。最上級のもてなし料理「五段の御取持(グダンヌウトゥイムチ)」と庶民に愛飲されていたブクブクー茶の再現はその成果だった。いずれも目と舌で味わえる一品である
 ▼スーパーに行けば豊富な食材が容易に手に入る。外食産業も多様な食を提案する。そんな時代だからこそウチナーンチュの知恵に根差した食の姿を見極めたい。洗練された美しさがそこにある
 ▼家庭料理のソーミンタシヤーの話も忘れがたい。「鍋にそうめんを入れるタイミングが難しい。お年寄りの手際を見てごらん」と諭してくれた。当方の知恵が不足しているのか、今も上手にそうめんを炒めることができない。もう一度、新島さんに教えを請いたかった。