<金口木舌>終活に挑戦


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 婚活、妊活、終活。「活」の字が活躍して久しい。これまで自然の流れで迎えた事柄も、就職活動のように自ら積極的に働き掛けようと生まれた言葉が広がった

 ▼特に終活は葬儀や墓関連のビジネスを巻き込んでブームとなった。しかし死や病という日本人が触れたくない話題を避け、表面的な話で終わっているように思えてならなかった
 ▼長野県須坂市を訪れた。長野県は平均寿命で沖縄を抜き、今や男女とも日本一の長寿県だ。須坂市はそのきっかけになった「保健補導員」発祥の地として知られる。主婦らが補導員となって減塩運動を指導し、隣近所の健康づくりを支援する
 ▼地域保健の先進地となった須坂を含めた3市町村の協議会は、自身が望む最期を生前に表明する「リビング・ウィル」を進めている。危篤状態になったとき、希望することをカードに記入しておくことで、本人の意思を尊重する仕組みだ
 ▼体が衰え、食べ物を飲み込む力が弱くなると栄養補給に鼻チューブを使う。次は胃に穴を開け栄養を送る胃ろうだ。「生かされているだけ」と指摘する医師もいる
 ▼試しにカードの七つの設問に記入してみた。「心臓マッサージなどの心肺蘇生」は「してほしい」にマル。「胃ろうによる栄養補給」にはバツ…。設問に真剣に向き合った。小さなカードは自らのよりよい最期を考えるきっかけになる。