<金口木舌>東京五輪の同時代に


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 50年前のきょう、東京五輪が開幕した。午後2時からの開会式はテレビ中継され、施政権返還前の沖縄でも大勢が見入った。1カ月前に東京-那覇間のマイクロ回線が開通したばかり。やっと全国と同時放送になり「テレビはひと足先に復帰した」と言われた

 ▼その日の本紙1面は「東京五輪きょう開幕」の記事のそばに「波乱含みの臨時議会」の見出しがある。当時、沖縄の政局は混迷を極めていた。米国による任命主席に批判が集中し、大田政作主席が6月に辞表を出した。以後、後継者選びが難航する
 ▼政情不安のままでは五輪開会式に出席できないと、焦ったワトソン高等弁務官が人選に介入してきた。分裂した保守2党の議員に密室で徹夜の協議をさせ、松岡政保氏に決めたのは9日明け方だった
 ▼主席公選を求める世論とは異なる展開に反発が強まり、月末には5千人が立法院を取り囲む「主席指名阻止闘争」が起こる。これが4年後の主席公選や復帰運動につながっていく
 ▼新幹線開業や高速道路開通に沸き、日本が高度経済成長の波に乗っていた同じ時代、沖縄ではまだ、自治という民主主義の扉さえも開いていなかった
 ▼復帰後も基地は居座った。熱望した平和憲法は時の政権によって骨抜きにされ、今は幽閉状態に近い。今夜発表のノーベル平和賞で、憲法9条が世界に向けて輝きだすことを願いたい。