<金口木舌>そぞろに胸の打ち騒ぐかな


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「今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸の打ち騒ぐかな」。野球好きで知られる歌人・正岡子規が詠んだ短歌だ。巡ってきた満塁のチャンスに、敵味方とも期待し、興奮するさまが浮かぶ

▼スポーツの魅力はそんな非日常の気分を味わえるところだ。選手の一挙手一投足を見逃すまいと目を凝らす。その先にあるのは歓喜かそれとも悲嘆か。誰にも結末が分からないから楽しみも大きい
▼きょうから11日間にわたり、長崎県で国民体育大会が開かれる。全国3冠を目指す少年男子ハンドボールや、お家芸の重量挙げなど活躍が期待できる競技が幾つもある
▼例えばボウリング。ことしは台頭する若手とベテランがかみ合った。アジア大会の女子主将を務めた石嶺可奈子選手や今季パーフェクトゲームを連発している村濱裕紀選手らの活躍が楽しみだ
▼ライフル射撃もなじみは薄いが、玉城弘也、新里葉津紀両選手は全国大会上位の常連。華やかなスポットライトが当たる舞台で輝きを放てば競技への理解、底辺拡大にもつながる。関係者の期待も大きいだろう
▼いわゆるメジャー競技と違い、見慣れない競技はルールや見どころなど戸惑う場面も確かにある。だが研ぎ澄まされた集中力や技術を発揮し、見る者を興奮させるスポーツの本質は変わらない。県勢の活躍が歓喜の風を運んでくれるかと今から楽しみだ。