<金口木舌>未来へ続く歴史絵巻


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 沖縄市のコザ十字路の地中に越来グスクの石垣が埋まっていると聞いた。現存していれば世界遺産に指定されたかもしれぬ遺跡が、グスクから離れた交通の要衝の地下に眠っているとは不思議な話

▼沖縄戦中、米軍が越来グスクの石垣を破壊し、戦後になって積み石を十字路周辺の道路整備のために運び出したという。二つの国道が接する十字路は琉球王朝の時代と敗戦後のアメリカ世が交差する地でもあった
▼十字路に程近い銀天街商店街では目下、越来グスクを題材にした壁画制作が進んでいる。若い芸術家と地元の看板職人の絵筆によって城壁が復活した。王子としてグスクにいた尚泰久はりりしい
▼銀天街は今、苦境のただ中にある。先月末、商店街振興組合が解散し、62年の活動を終えた。郊外型店舗との厳しい競合の帰結かもしれないが「時代の流れ」と片付けるわけにはいかない
▼中心市街地の空洞化に銀天街は挑んできた。昔ながらのご用聞きが地域を回り、お年寄りの暮らしを支えたのはその一例だ。銀天街に集う市民らは壁画に呼応した企画を予定している
▼台風が去るのを待って銀天街を訪ねた。壁画の中には護佐丸や阿麻和利に加え、重機に乗って石垣を壊すマッカーサーもいる。この歴史絵巻の延長に銀天街の挑戦がある。未来に向かって石垣を積み重ねるように、新たな歴史がつくられていく。