<金口木舌>島バナナは沖縄の宝


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 バナナの皮を踏むと滑りやすい。多くの人が常識と考えがちな現象を科学的に解明した。ユーモアにあふれ、考えさせられる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」を受賞した北里大学の馬渕清資教授らの研究だ

▼バナナの皮の内側には粘液の詰まった粒があり、足で踏むとつぶれて滑る原因になる。実験の結果を筋道立てて知ると、胸がすっきりする。目の付け所がユニークで面白い
▼沖縄でバナナといえば「島バナナ」。酸っぱさと甘さが絶妙で、旧盆やシーミーの供え物として愛用されている。最近、植物に詳しい人から「島バナナを見掛けなくなった」という声を聞く
▼県がまとめた「市場年報」によると、昨年の島バナナの年間取扱数量は5913キロで、5年前に比べて10分の1以下に激減している。県によると害虫やウイルス、台風による被害、生産農家の減少などいくつかの要因が絡んでいる
▼島バナナは沖縄の昔ながらの慣習と切り離せない。戦前、県内各地で栽培されていた在来の大豆のように、姿を消していくのは何とも寂しい。9月末、「NPO法人沖縄有用植物研究会」が島バナナの減少に危機感を抱き、苗を分け合い栽培と普及を始めた
▼日本でバナナが露地栽培できるのは、鹿児島県から南といわれている。島バナナの希少価値を生かして、むしろ県外へ売り込む発想があってもいい。