<金口木舌>人生を変える一冊


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 バスや電車などで読書に熱中する人がいると何を読んでいるのか気になる。自分が本を読む様子を見てその本に興味を持ち、読んでみたいと思う人が増えれば本にとっても幸せなはずだ。だからブックカバーはしない

 ▼本との出合いで思い出すのは、小学生の時に書棚にあった推理作家、横溝正史氏の「犬神家の一族」とジャーナリスト、本多勝一氏の「日本語の作文技術」だ。初めて読んだいわゆる「大人」の本だった。2冊とも面白くむさぼるように読んだ
 ▼「犬神家」を読まなければ推理小説好きにならなかっただろうし、「日本語」を読まなければ文章を書く仕事への興味は生まれなかっただろう。人生を変えたというと大げさだが、何らかの影響を受けたのは間違いない
 ▼一冊の本との出合いから衝動的な旅に出るのは映画「リスボンに誘われて」の主人公だ。この世に100冊しかない本の内容に感銘を受け、仕事を投げ出し作者の人生をたどる
 ▼鮮烈な生き方を送る作者らに比べ、平凡で退屈な男だと自己評価する主人公。だが、本との出合いは彼の人生を変えた。読む人を励まし、時に背中を押してくれることもある。それが本の力だ
 ▼きょうから読書週間。「リスボン-」の主人公のように人生を変える一冊に出合えるかもしれない。いずれにせよ読書は生活に潤いを与えてくれる。