<金口木舌>「挑戦」への扉開く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新たな人生が決まるとき。本人だけでなく、吉報を待つ家族も気が気でない。球児憧れのプロ野球ならば、なおさらだ。ドラフト会議は期待と不安が交錯する一日となる

 ▼名護市東江中出身の福地元春投手の自宅でも、早朝から庭の手入れで気を紛らす父安夫さんの姿があった。「何をしていいのか分からなくて」。苦笑いに正直な心境が見えた
 ▼横浜DeNA4位指名で緊張感は喜びに変わった。だが「もーとー」と息子の名を連呼するだけ、しばらく言葉が出てこない。自身も高校球児で親子で描いた夢。「諦めずによく努力した」と人目をはばからずに涙した
 ▼福岡の高校、大学に進んだ福地投手は全国的には無名だった。一方、島袋洋奨投手は興南で甲子園春夏優勝投手という華やかな経歴を持つ。「運命の日」、家族が集まる父直司さんの今帰仁村の実家にも、複数のメディアが待機した
 ▼注目を集める中でのソフトバンク5位指名。カチャーシーを踊る家族の姿に周りの誰もがホッとした。球歴では対照的な2投手の新たな出発に期待が膨らむ
 ▼島袋投手の特徴はトルネード投法。大リーグでも活躍した元祖トルネードの野茂英雄投手は「挑戦なくして成功はない」との言葉を後進に残した。大学でもがき苦しんだ島袋投手、社会人で花開いた福地投手。自らの力で夢の扉を開いた両左腕には「挑戦」がよく似合う。