<金口木舌>思いやりの社会を


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 生き方を変えるきっかけを与えてくれた人に「ありがとう」を伝えたかった。こう記した上原大樹さん(泊高校定時制午前部3年)の生徒生活体験発表文(10月31日付教育面)に心を打たれた

▼不登校だった上原さんを支えた医師のK先生は持病の悪化で突然亡くなった。だが、上原さんの気持ちに寄り添い優しく語り掛けたK先生の言葉は死後、上原さんの生き方を変えた
▼人生の転機となった場面で受けた温かい助言を紹介している「わたしの鑑」。人を変えるきっかけになる一言は、他者には厳しく聞こえたとしても思いやりのある言葉が多い
▼1日に掲載された県内投票所のバリアフリー調査結果の記事を読み、人の立場に立って考える大切さを再確認した。投票所のバリアフリー化が義務化されているが、車いすに対応した「段差なし」の施設は7割にとどまる
▼権利を当たり前に行使できない状況は解消されなければならない。施設の整備だけではない。車いす用スロープの前に駐車された車によって移動できず、困惑する障がい者。その姿を見て自分の身になって考え、配慮する必要性を痛感した
▼心ないヘイトスピーチが横行している。大切にしている人への思いやりを広く他人にも向けられないか。一人一人がもう少し人をおもんぱかる気持ちを持てば、もっと優しい社会に変わるのではないか。