<金口木舌>沖縄コーヒー


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 「グルメ男爵」と呼ばれた尚順(1873-1945年)にまでさかのぼるというから、結構な歴史である。県内のコーヒー栽培は、桃原農園が持つ本部町の農園に起源があり、尚順が従業員に命じて始まったという

▼1日に設立した沖縄珈琲生産組合の会長に就任した宮里直昌さん(64)=沖縄市=は言う。県内でコーヒーが農業として普及しなかったのは「直射日光、台風など気候による影響が大きく、栽培しても商売として引き合わなかったため」とか
▼それでも県内では離島を含め本島南部から北部まで、規模の大小はあれ、農家が営農を続ける。生産組合の組合員数から推しても20以上の農場数だ。災害対策に向けた並々ならぬ創意工夫が背景にあっての営みである
▼その災害対策を営々と施されてきた沖縄コーヒーの特色は「香り高く、芳醇(ほうじゅん)なコク」という。「コーヒー好きにはたまらない」との触れ込みもあり、県外から一杯のために足を運ぶ人もいるという
▼生産組合では今後、基準も曖昧だった沖縄コーヒーの品質や等級付けなどの事業に取り組む。消費者に分かりやすい品質の保証と、商品管理が信頼を築くとの考えからだ
▼県内の厳しい環境下で栽培農家が心血注ぎ、この土地に根を張り始めた沖縄コーヒー。その栽培史にも思いをはせれば、沖縄産の誉れ高き味わいも加わり、ぐっと身近な一杯となる。