<金口木舌>生活に伝統文化を


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 今から44年前、1970年のきょう、第19回技能五輪国際大会(国際職業訓練競技大会)が東京で開かれた。アジアでは初めての開催だった

▼若手の技術者が仕事の技能を競うこの大会とも相通じるものがあるが9日は、卓越した技能を持つ「現代の名工」が発表された。県内から新たに認定された2氏に敬意を表するとともに、沖縄の伝統工芸や工業技術に関する長年の努力が評価されたことを喜びたい
▼「名工」らが共通の課題に挙げるのが後進の育成だ。認定された和服仕立職の熊谷フサ子さん(71)=那覇市=は手縫い文化の衰退を憂い、手縫いに関する著書やDVDを県内中学校に配布するなどの活動もしてきた
▼著書の執筆過程では沖縄の習俗を調査。男子が生まれたら母親の腰巻き、女子なら父親のふんどしで産着を縫う。人生の節目で手縫いが重要な役割を果たしたことを知り、伝統文化継承の必要性を再認識したという
▼もう一人、ガラス吹工の池宮城善郎さん(56)=うるま市=は独自の技法を生み出し、琉球ガラスを発展させた。歴史や伝統を守り新たな技能で進化させる。若者も挑戦しがいのある魅力的な世界ではないか
▼技能五輪日本初開催にちなんだ「技能の日」に思う。伝統工芸を守るには当たり前だが需要が必要だ。沖縄生まれの素晴らしい伝統文化に目を向け、もっと生活に取り入れたい。