<金口木舌>大切な命を守りたい


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 学生時代、自宅の庭に迷い込んだオカメインコを家族で飼ったことがある。頭をなでると気持ち良さそうな表情をするところが愛らしかった

 ▼癒やしの存在だったがある日突然、死んだ。飼った時間は短かったがこれほど悲しい気持ちになるものかと愕然(がくぜん)とした。その時、動物を飼うのには向いていないと感じた。しかし、ペットをみとることは子どもたちに命の大切さを伝える教育にもなるという
 ▼一方で、小型犬の大量遺棄が問題になっている。昨年9月、ペットを終生飼育する義務を定めた改正動物愛護法が施行されて以降、山中などに犬がまとめて捨てられているというニュースが後を絶たない
 ▼愛護法では自治体が殺処分のため安易な引き渡しの申し出を拒否できることが明記された。そのため悪質な業者が繁殖できない犬をまとめて捨てている、との見方もある。ペットを捨てない社会を目指す法律が大量遺棄をもたらす社会は何ともむなしい
 ▼明るいニュースもある。10月22日付紙面では、迷い犬を発見した男性が本紙広告を通じて呼び掛け、殺処分される前に飼い主の元に戻ったことを報じた。11月12日付、車体の隙間に入り込んだ子猫の救出劇も心温まった
 ▼大切な命を守るため、何人もの人間が力を尽くす姿は心を打たれる。動物の命をモノ扱いしない、という根本が守られなければ、法律は意味をなさなくなる。