<金口木舌>民の声は聞こえたか


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 国会中継で「ギョメイギョジ」を聞くのは初めてだった。議員も聞き慣れないのだろう。解散詔書を読む伊吹文明議長が「解散する」と宣言して「ギョメイ」と続けた途端、万歳が始まった

▼話題となった「フライング万歳」だが、解散詔書の朗読は「解散する」で終わるのが通例。議員の大半が戦後生まれでは、天皇の署名と印を指す「御名御璽」は縁遠い。万歳のタイミングを外すのも無理はない
▼国立国会図書館のデータベースによると、衆院本会議で「御名御璽」を読み上げて解散の万歳をしたのは戦後2回。うち1回は「天の声解散」と呼ばれた1955年1月の鳩山内閣の時である
▼前年12月の衆院予算委員会で鳩山一郎首相は解散理由を「天の声」と答弁した。「天」とは「御名御璽」の主にあらず。社会党との間で交わした早期解散の合意を遠回しに言ったものだ
▼委員会では憲法問題も議論した。「憲法改正、再軍備に関する意見を聞きたい」の質疑に鳩山首相は「改正は必要」「自衛隊は軍隊」と持論をぶった。平和憲法に背を向けた「逆コース」の時代だった
▼「逆コース」を走る安倍晋三首相は勝てるタイミングを踏んで解散したのだろう。「アベノミクス解散」を自称するが「国民そっちのけ解散」の別称も飛ぶ。首相の耳には「民の声」が聞こえたか。知事選を終えた沖縄から問いたい。