<金口木舌>「アベノミクス」はどこへ


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 ワイングラスをピラミッドのように3段積み上げた図が、ツイッターで話題になっている。一番下のグラスは庶民、2段目が中小企業、一番上のグラス1個を大企業と投資家に例える

▼日銀の「金融緩和策」というワインを注ぐが、満たされるのは一番上のグラスだけ。次々注いでも下には流れない。株価が急騰し、大企業の業績は回復したが、庶民は恩恵を受けていないと指摘される「アベノミクス」を皮肉る
▼県統計課が発表した9月の家計調査では、勤労者世帯の1世帯当たりの実収入は対前年同月比で5カ月連続減少した。消費支出も前年同月に比べ21・2%減少した。物価は上昇したが収入は減少し、消費税増税も相まって、買い控えが広がっているさまが浮かび上がる
▼那覇市内のスーパーで生鮮食品や総菜が値下がりする時間を狙い、買い物するのが習慣になっている。数十円の違いに一喜一憂する。一方、市内は高層の高級マンションの建設ラッシュだ。満室御礼の広告に格差社会の広がりを実感する
▼貧困問題に詳しい県内のNPOの代表は「裕福な層は家庭環境の近い人が仲間に多く、似たような環境の人と結婚する傾向がある。意識しないと貧困問題に気付かない」と語る
▼衆院選の争点の一つがアベノミクスへの評価だ。一番下のワイングラスの立ち位置から、暮らしを見据える候補者を望みたい。