<金口木舌>認めることの大切さ


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 独自に教材を開発するなど算数教育で県内の第一人者といわれる先生を取材した時のことだ。苦手な子がどうすれば算数好きになるかを聞くと、黒板にずらずら数字を書き始めた

▼そのときは10桁(10億)同士の足し算で「これを2、3年生に解かせると自信がつく」と言う。掛け算が終わったばかりの学年に10桁の計算は難しいのではと思ったが、種明かしを聞いて納得した
▼その式は繰り上がりがなく単に上と下の数字を足すだけだった。簡単なのだが、10億の計算ができたことに子どもは自信を持つ。桁が増えるほど「できた」子どもは数字の世界が好きになる
▼算数に限らず子どもが嫌いになるのは「できないから」「認めてもらえないから」という他者の評価があるからだろう。逆に好きになる、夢中になれるのは誰かに認めてもらえることだ
▼「自己肯定感」は、そうした自分の居場所を見つけることにもつながる。那覇市が不登校などの中学生の社会参加支援で着実に成果を挙げている(28日付35面)。「認める」ことの大切さを尊重しているからだろう
▼特効薬のない不登校や引きこもりは誤解されやすい。子どもが内面と向き合う時間が必要なのに無理に「外へ出よう」と促すのは逆効果だ。まず何よりも自分と向き合い、子どもの個性や志向を認めることだ。そうした居場所を確保することが大人の役目だ。