<金口木舌>照間のビーグ


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 ことしもビーグ(い草)の苗植え作業が終わり、来年5月下旬から始まる収穫を待つ。その間も肥料入れなど見守り作業は続く。約130年前から変わらない、うるま市照間の風景である

▼畳表の材料となる照間のビーグは農薬を一切使わない。海沿いの水田であるため、潮風が当たって害虫を払いよけるためだ。無事に育てば、太さは県外産の1・5倍となり、丈夫な畳表になる
▼静かな田園風景の残る照間にも経済グローバル化の波が押し寄せて久しい。照間で兼城タタミ店を営む兼城哲治さん(55)=嘉手納町=によれば、安い中国製い草が県内シェアの8割を占める
▼加えて最近の住宅事情である。住宅やアパート、マンションの床材はフローリングが主流となり、畳のシェアを大きく奪っている。いきおい沖縄ビーグの需要は右肩下がりで推移する
▼それに伴い、供給側も衰退している。兼城さんは「年々、耕作放棄地も増えている」と言う。一部の農家を除き、機械化は進まず、今も手作業が主流のビーグ栽培は高齢者にとって負担が大きい。若手からも敬遠されがちだ
▼さりとて明るい兆しもある。沖縄ビーグの丈夫さや、群を抜く香りの良さは大きな強み。その特長を生かした製品は、県外で高級品として高い評価を受けている。人とビーグが育んだ地域文化の再興に向け、知恵を出し合う時である。