<金口木舌>数字に現れる差別


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 人種対立を原因とする米国の暴動に歯止めがかからない。ミズーリ州、ニューヨークで丸腰とされる黒人男性を死亡させた警察官が、相次いで罪に問われないことになったからだ

▼ミズーリの事件後、ジャーナリストの仲野博文氏が情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」に寄せた報告を読んで驚いた。2003~06年に、警察官が拘束時に容疑者を死亡させた事例の米司法省統計を紹介している
▼容疑者死亡は100万人当たり白人が0・9人なのに対し、黒人は3・66人、中南米系は1・92人に上る。黒人だけを見れば白人の4倍だ。黒人と中南米系の警察に対する不信感はこの現実に由来しているのだろう
▼現地を知らない日本人にすれば、差別の実態は分かりにくい部分があった。だが数字にすれば一目瞭然。あまりにも大きな数の開きは、差別を受ける側の心の痛みをも伝える
▼日本でも似たようなことはある。国土の0・6%に米軍専用施設の74%。沖縄を訪れなくても、数字から異様さは感じ取れる。これを差別と思わぬのは見て見ぬふりをしているか、感受性が欠けているかのどちらかではないか
▼差別を受ける側の求めは極めて分かりやすい。「われわれを多くの人と平等に扱ってほしい」。海を越えた米国でも沖縄でも願いは変わらない。不信の連鎖を断ち切る決め手は、差別する側の胸の内にこそある。