<金口木舌>個食と会食


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 真冬並みの冷え込みが続く師走。県内のスーパーでは鍋用の食材やだしが店頭の一角を占めている。ここ数年、全国的にはやっているのが「一人鍋」だ

▼このブームが県内でも広がっている。量販店では一人用鍋の販売数が昨年より増え、スーパーでも小分けした一人鍋用の材料が売り上げを伸ばしている。少人数向け鮮魚パックも売れているのは、それぞれ一人鍋ということだろう
▼鍋料理は手軽にたくさんの野菜を食べられるだけでなく、体が温まるのも魅力。単身世帯が増え、誰にも気兼ねせずに味わいたいという人が増えたこともブームの背景にはあるようだ
▼一人旅に一人カラオケなど「おひとりさま」ブームの中、少々寂しく響くのが一人用の「ぼっち席」。関西の大学が学内食堂に設置したところ、学生に人気で混雑時には「ぼっち席」から埋まるほどだという
▼6人掛けテーブルの中央についたてがあり、向かいの人と目線が合わない造りになっている。友人がいないわけではなく、一人の時間に心地よさを感じているのだろう。増席を望む声もあるらしい
▼人との付き合いは気疲れしたり、煩わしさを感じたりすることもある。それでも対話は新たな発見や楽しさをもたらしてくれる。価値観は多様化しており「ぼっち席」も快適なのかもしれない。だが食べながら仲間と語らうこともいい。