<金口木舌>ぎのわん車いすマラソン


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 障がい者との共走、共汗、共生を楽しむ。この趣旨が広く共有されることを願う気持ちが大会にあふれた。ことし26回を数えた「ぎのわん車いすマラソン」には287人がエントリーしたというから、第1回(24人)の12倍の広がりである

▼健常者も参加でき、沖縄国際大学の2年生7人が出場した。山川茉里奈さん(浦添市)は「めっちゃきつい」と、銀輪をこぐ手が重そうだった。完走して「健常者も参加して楽しんでほしい」
▼普段歩いても、ちょっとした段差には気付かない。それを車いすで越えるのがいかに大変かを実感したのは照屋愛実さん(沖縄市)。「何でもない段差だと思ったのに。こんなにきついなんて」
▼悪戦苦闘する健常者と、前へ前へと突き進み、疾走する選手の姿が対照的だった。3・5キロで連覇した名護特別支援学校高等部2年の大城勇太さん(国頭村)もその一人。次の目標を約21キロのハーフ出場に据える。「まずは完走したい」と闘志をたぎらせる
▼ハーフ脊損の部の渡辺勝さん(23)=福岡市=は先行逃げ切り型の選手を追う展開で2位。連覇を逃したことで「戦略ミス。まだ若造で甘かった」。悔しさの中にレースにかける情熱がほとばしった
▼大会は多彩な生き方への共感がじわりと浸透していることを感じさせる。師走に共走、共汗し、迎える年も共生を願う。大会はそんな社会づくりの機会になる。