<金口木舌>体験の重み発信を


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 早朝の国会議事堂正門に、白い息を吐きながら初登院する議員の姿があった。正門は選挙後最初の召集日など特別な日しか開かない。選挙の関門を突破した議員たちには、まぶしい晴れ舞台だ

 ▼話題の議員にメディアが群がるのもおなじみの光景。今回は「オール沖縄」の4氏を報道陣が幾重にも取り巻いた。自公が絶対安定多数を維持した今衆院選で、自公が全4選挙区で敗れた沖縄の注目度は高い
 ▼中でも新人の仲里利信さんを多くの記者が取り囲んだ。衆院議員では亀井静香さん(78)に次ぐ77歳。初当選組ではもちろん最年長だ。戦争を肌で知る世代がほとんどいなくなった国会の中で、戦争体験が政治家人生の原点となった人でもある
 ▼沖縄戦末期、宜野座に避難したのは7歳の時。日本兵に追われガマを出た。家族とはぐれ、食料もない山をさまよった。母は母乳が出なくなり、弟は満1歳で餓死した。父も戦争で失った
 ▼第1次安倍政権下、高校歴史教科書で「集団自決(強制集団死)」の記述を検定で削除した問題が起きた際にはいち早く反対を訴え、撤回を求める県民大会の実行委員長を務めた
 ▼来年の国会では、集団的自衛権の行使を容認したことを踏まえた安全保障関連の法律が議論される。第3次安倍政権の国会に一席を占める仲里さん。体験の重みを戦後70年の国会で発信してほしい。