<金口木舌>子どもの可能性は無限大


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 羊飼いが1匹の羊を見失った。目の前の99匹を野原に残して、1匹を諦めずに捜し回った。やっと見つけると「一緒に喜んでください」と友達や近所に呼び掛けた

 ▼ことしのえとは「未(ひつじ)」。新約聖書にある例え話は、羊飼いをキリスト、人間を羊に見立てる。神の熱心さが迷える羊を連れ戻すと説き、たとえ1人でもその存在の大切さを伝えている
 ▼女優の黒柳徹子さんの自叙伝に「窓ぎわのトットちゃん」がある。トットちゃんこと黒柳さんは好奇心旺盛な女の子。教室の窓からちんどん屋さんを見つけると同級生に知らせるなど迷惑がられる行動があり、私立小学校を退学になった
 ▼その後、「トモエ学園」に入学し、小林宗作校長と出会う。小林校長はトットちゃんを理解し「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」と言い続けた。トットちゃんは自信を持ち、長所を伸ばしていく。小林校長は子どもの可能性を見失わなかった
 ▼数年前、少年院への入所経験のある男性を取材した。男性は10代のころ、仲間の誘いを断れず、深夜徘徊(はいかい)や暴力行為を繰り返した。県外で就職し立ち直ったが「親が諦めず信じてくれたから今がある」とかみしめた
 ▼子どもは次代への希望であり、沖縄の宝だ。成長の道のりには苦楽ともにあるだろう。荒野をさまよっているときこそ諦めず、子どもの可能性を見失わないようにしたい。