<金口木舌>隘路の基地


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 少年非行を取材した時のこと。少年が暴走行為で、警察に捕まらない“極意”を別の少年たちに説いた。「狭い道に逃げ込めばパトカーは追って来られない」。「隘路(あいろ)」を熟知した悪知恵に、別の生かし方もあるのにと思ったことを覚えている

▼時が過ぎ、今や警察の追跡捜査にも最新ツールが導入され、そんな逃走方法も通用しまいと考えていた。だが、思わぬ場所がもう一つの「隘路」になっていることに気付かされた
▼日米安保条約に基づく法律に、米軍施設・区域への立ち入りを禁じる刑事特別法がある。それに違反し、浦添市牧港のキャンプ・キンザーに正当な理由なく侵入した疑いで少年2人が逮捕された(6日付本紙)
▼悪事を働いた米兵が基地に逃げ込み、そのまま本国に逃走することが度々あった。が、さすがに日本人の暴走少年はすぐに米憲兵隊が身柄を確保し、浦添署に引き渡された
▼少年たちの供述には考えさせられた。「パトカーから逃げるために入り込んだ」。米軍基地内には日本の警察権が及ばぬ「隘路」があると考えたか
▼少年たちの無鉄砲な行動とともに浮き彫りになったのは、米軍基地という「隘路」の存在だ。狭く険しい道を意味する「隘路」は改修すれば快適な道にもなる。だが、物事の障害になる意味を持つもう一つの「隘路」は存在そのものがなくならなければ、障害であり続ける。