<金口木舌>企業の使命


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 新年を迎えて間もないこの時期に、あまりの仕打ちというほかない。宜野湾市内でコールセンター事業を営む企業が全従業員33人に20日付での解雇を通告していた

▼労組へ事前説明もなく「業績悪化」を理由にする一方で、他県に同じコールセンターの設立に動いている。県内では母子家庭の母を雇用する事業主を支援する助成金約200万円を受けていた
▼従業員の大半はパートなどの非正規雇用者だった。中には幼児を抱えた母子家庭の女性や家計を支える高校生、大学生も。14日の従業員のストライキ終了間際には制服姿の高校生2人の姿もあった
▼聞くと授業を終えた後にアルバイトをしていたという。3年生の女子高生は給料で修学旅行費を賄い、次は就職に向けて運転免許を取得しようと目標を立てていた。2年生の男子高生は進学費用にと使い道を決めていた
▼30歳代のパートの女性は「探すしかない」と職探しに奔走する。60歳を超える人も複数いる。「この年で雇ってくれる所はもうない」。当てにしていた収入源を失い、悲嘆に暮れていた
▼夢や希望を胸に、これから社会に飛び立つ若者たち。出ばなをくじくことがあってはなるまい。ましてや、一人で子育てにいそしむ母親や高齢者に生きづらさを強いるなどもってのほかだ。企業ならば、その使命も肝に銘じてほしい。