<金口木舌>国土0・6%の痛み


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 基地の過重負担を訴えて「国土面積の0・6%の沖縄に在日米軍専用施設の75%が集中している」と県民が力説するようになったのは1990年前後のことである。県土と基地の面積比率を挙げて説明すれば国民全体の理解を助ける

 ▼それを四半世紀も言い続けてきたのは、基地の整理縮小が進まないからだ。基地重圧を伝える定型句という以上に、小さな島に暮らす県民の苦悩に目を向けよという切望がこもる
 ▼参院議員だった喜屋武真栄さんの「小指の痛みは全身の痛み」を連想する。この言葉が県民の共感を得たのは、小指の痛みが全国に伝わらないという焦燥があったからであろう
 ▼国策に悩み、小さな島の命運を見詰める習いを古い新聞から拾った。1904年12月、本土に泡盛を出荷する沖縄の酒造業に課した「出港税」の増税を批判する本紙論評に「沖縄一県は百分の一にも当らざる一小区域」とあった
 ▼筆者は「一小区域」の特産品を「丸つぶし」にする増税の裏に清酒の保護を優先する本土政財界の思惑を嗅ぎ取った。「天南」の署名は創刊者の一人、太田朝敷の筆名。日本への同化を説いた言論人も政府の「無法」を論難した
 ▼強大な国権が「国土の0・6%」を揺さぶる。辺野古沖の専横に怒り「小指の痛み」を全身で受け止める想像力がこの国にあるか。戦後70年、沖縄は「民主国家」の真価を問い掛ける。