<金口木舌>旧友に再会して


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 旧友に再会したような気分である。那覇市おもろまちの天久りうぼうの新店舗名「リウボウ・フード・マーケット」の頭文字「R」が昔のデザインに戻った。1月29日付本紙の写真を見て懐かしんだ人もいよう

 ▼店舗の改装と合わせて平仮名の店名を英字に改めた。海外観光客の取り込みを意図したという。デザイン復活はなぜか。店に聞いてみると「原点に戻る」という答えが返ってきた
 ▼古い新聞をめくった。1960年代初めから91年まで、リウボウの広告には丸で囲んだ「R」の文字が使われた。今見てもおしゃれな字体だ。40代前半の同僚数人に聞いてみたら「知らない」と素っ気ない。嫌でも年の差を感じてしまう
 ▼紙面には山形屋や沖縄三越の前身・大越の広告も並ぶ。沖縄百貨店業の原点に位置する店だ。記事では60年代後半から「基地」「沖縄返還」の見出しが躍る。苦悩の源流をたどるような思いで活字を目で追った
 ▼戦後70年という節目の年を迎えて、はや1カ月が過ぎた。元旦に誓った「新年の計」を思い出せぬほど慌ただしい日が続いている。ちょっと立ち止まって、時の流れを見定めたい
 ▼2人の日本人を襲った惨劇に言葉を失う。戦後の歩みを踏み外した為政者の発言を聞く。焼土から立ち上がり、原点を記した「旧友」は何を思うだろう。懐かしいデパートの文字を見詰め、しばし考えてみる。