<金口木舌>家族救う公的な支え


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 2年ほど前、本島中部の病院の医師に同行して在宅で療養中の高齢女性を訪ねた。日当たりのいい洋室にベッドを置き、3人の娘が交代でケアに当たっていた

 ▼娘の1人は介護をするため、県外から帰郷していた。母の様子を語り合う娘たちの表情は明るかった。介護は「つらさ」が強調されがちだが、それとは程遠かった
 ▼一方で、厳しい現実もある。自宅で親や配偶者らを介護する人を対象に、連合が実施した調査では8割が介護にストレスを感じ、3人に1人は「憎しみ」さえ抱いていた。介護保険サービスは「家族の負担が軽減されない」など不満も浮き彫りになった
 ▼4月から介護保険が改正され、介護度の軽い要支援1、2の高齢者向けサービスが変わる。事業所のデイサービス利用者の多くは、市町村が実施するミニデイサービスや交流の場などが受け皿になる
 ▼その運営の担い手はNPOやボランティアが想定され、人材の確保と育成が課題になる。3年の猶予期間に県内市町村も万全の態勢を整えねばならない。人口が少ない離島の町村にとって担い手確保はより深刻だ
 ▼「ありがとう、という言葉で人生を締めくくりたいものです」とは、日野原重明新老人の会会長の言葉。誰もがそう願う。高齢者の尊厳を守り、豊かな老後を築く工夫を重ねたい。公的な下支えがあれば、家族は快く介護に向き合える。