<金口木舌>失業率改善と教育


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 宮古島市出身で医師、タレントの友利新さんがうるま市での就業意識向上講演会で紹介した「働く」の意味付けが興味深かった。「傍(はた)」を「楽(らく)」にすることだと。本来の語源ではないが、他者の負担を軽くして支えるとの話に共感を覚えた

▼友利さんの母は「金は奪われても、知識は奪われない」との信念で、娘の「知識の吸収」には助けを惜しまなかったという。そんな教育方針が友利さんの職業に結び付いている
▼うるま市は企業誘致に躍起になっている。背景には2010年度の国勢調査がある。市の完全失業率は18・2%で全国ワースト5位、県内ではワースト。一人でも多くの市民に雇用機会をと、市に課せられた責任は重い
▼若者の就業意識を向上させるには、多彩な雇用機会をつくりだすことが必要だ。そのために多様な企業を誘致するのも行政の使命である。だが、それだけでは十分とはいえまい
▼うるま市の具志川東中学校は「東塾」を開設している。卒業生の大学生が無償で受験を控えた後輩を教える校内学習塾だ。上江洲隆校長は言う。「教育は子どもたちに人生の選択を間違えないように知識を授けるもの」
▼他者を思い、知識ある者が授けて支える。「傍楽」と相通ずるその取り組みは受験生だけでなく市民にも、冬を越え、やがて訪れる暖かな春の芽吹きを感じさせてくれる。