<金口木舌>ガラケー出荷増


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 朗報というわけではないが、胸に響くものがある。民間調査会社「MM総研」によると、ガラケーと呼ばれる従来型の携帯電話の出荷台数が7年ぶりに前年を上回った

▼スマートフォンの高い使用料金を敬遠する人や、通話など最低限の機能があれば十分だと割り切る人の間でガラケーは根強い人気だと聞く。それでもスマホ全盛の折、出荷量を伸ばすとは予想外だった
▼道具との付き合い方を考えるヒントがありそうだ。デジタル機器の新陳代謝は激しい。高機能を兼ね備えた新機種は現行機種を駆逐する勢いで登場する。それはゴールの見えない利用者とメーカーの駆けっこのようである
▼ポケベルが普及していた当時を思い出す。「電話よこせ」の合図は正直うっとうしく感じることもあった。同世代の間で「職場と鎖でつながれているようだね」と軽口をたたいていた。今はどうか
▼ケータイのおかげで10円硬貨を手に公衆電話を探し回る手間はなくなった。スマホの登場で居ながらにしてさまざまな情報が手に入る。技術はさらに進むだろうが、利用者はちょっと立ち止まってもいい
▼鎖よりも手ごわい網にからめ捕られていないか。「つながる」というスマホの魅力の裏にネット依存の怖さがある。便利さを追求するのも良いが、足るを知るという自制心も必要だ。その境目を手元のガラケーに見つけたい。