<金口木舌>昔の名前で出ていませんが。


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 京都にいるときゃ忍、神戸じゃ渚と名乗った-のは小林旭さんのヒット曲「昔の名前で出ています」。作詞の星野哲郎さんは、店をくら替えしたホステスさんからの電話で、前と同じ名前で働いていると聞いて着想した

 ▼同じ女性でも名前が変わると違う人に思えるから不思議である。だからこそ店を変わる度に心機一転となるのだろう。さてこれも心機一転策か
 ▼政府は、働く時間でなく成果で評価する「高度プロフェッショナル制度」の来春導入を目指す。呼び名は変わっても内容は「残業代ゼロ」制度だ。8年前の第1次安倍政権は「ホワイトカラー・エグゼンプション」と銘打ったが、「過労死促進法」などと世論の猛反発を受けて断念した
 ▼今回は対象者を年収1075万円以上、高度な専門職などと限定する。だが派遣労働の規制緩和では対象職種が徐々に広がり、ついには製造業も対象になった。当初の限定がそのまま続くと考えるのは素朴すぎる
 ▼評価が成果だけだと成果が上がるまで仕事を終えられない。結果として長時間労働を招き、働く人の健康を脅かすのではないか。不安は消えない
 ▼星野さんは、飲み屋の扉が開かない時におかみが言った一言を歌詞にした。水前寺清子さんの「おしてもだめならひいてみな」だ。働き方の根幹に関わる問題である。一歩引いて、働きやすい世の中を考えてみてもいい。