<金口木舌>ピンクシャツの願い


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 カナダのある高校でのこと。男子生徒がピンクのポロシャツを着て登校したら同性愛者とからかわれ、暴行を受けた。話を聞き義憤に駆られた2人の男子がピンクのシャツを約50枚買い、友人らにメールで呼び掛けた。「あす一緒に学校でピンクを着よう」と

 ▼翌日、声を掛けた人数を上回る生徒が一斉にピンクの服を着てきた。後日、いじめられた生徒はピンクのシャツで再び登校できるようになった。その後、この高校ではいじめが消えた
 ▼2007年にあった実話だ。大人数の行動でいじめに対抗した話はカナダ全土に広まり、2月最終水曜日は「ピンクシャツデー」になった。州知事や銀行員、警察官もピンクを身に着け、社会を挙げていじめ反対を訴える
 ▼日本の小中高でのいじめは13年度が約18万6千件。うち小学校は約11万8千件と過去最多だった。いじめ自殺やネットいじめの増加、加害者を注意した子が逆に被害を受けるなど深刻だ。見て見ぬふりではなく、みんなで意思表示をして立ち向かうやり方は注目される
 ▼運動は今や世界75カ国以上に広がり、イベントでは大勢でレディー・ガガの「Born This Way」を踊る。いじめられても、からかわれても自分を愛そう、という歌詞は勇気を贈る
 ▼沖縄ではまだ知られていない運動だ。ヒカンザクラの季節に、新しいピンクも咲くといい。