<金口木舌>多様性がヒットの源に


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 ムーミンは好奇心旺盛で優しく、リトルミイは怒りっぽいが、前向きで憎めない。スナフキンは旅と孤独を愛する自由人。ムーミン物語を彩るキャラクターは個性豊かだ

▼昨年は作者トーベ・ヤンソン生誕100年。ことしにかけて全国でムーミン展開催や映画上映があり、にぎわっている。「あるある」と共感を呼ぶやりとり、多種多様なキャラクターが人気の源だろう
▼詩人金子みすゞの代表作「私と小鳥と鈴と」に、ムーミン物語の「多種多様」と相通ずるものを感じる。その一節「みんなちがって、みんないい」には、違いを認め合いたいとの願いがこもっている。その思いが胸を打つ
▼それとは程遠い現状もある。家族の介護などで離職する人は年間10万人。女性の出産離職率は約30年間、6~7割で推移する。男性の労働時間は先進諸国に比べ2時間以上も長い。これが当たり前では働きにくい。辞めざるを得ない構図が見えてくる
▼ゴーグルの形をしたパナソニックの「目もとエステ」や、花の蒸留水を使ったキリンの無糖炭酸飲料は女性が開発してヒットした。生活者の視点で需要をつかんだ好例だ
▼介護や出産、育児の経験はさまざまな商品開発に生かせる可能性を秘める。それぞれの生活体験から生まれる知恵は発想の幅を広げる。多種多様な人が働き続けられる職場づくりは、ヒットの源にもなるだろう。