<金口木舌>自分は忘れないよう


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 2014年、東京都で落とし物として届けられた現金は約33億4千万円だったと先月、警視庁が公表した。持ち主に戻った金額は約24億7千万円にとどまったというから残念だ

 ▼ただ、複数の海外メディアは戻る額が多いという驚きを持って報じた。海外では落とし物が戻ることは珍しいとはよく聞く話だ。訪日外国人が「ミラクルだ」と感謝する事例も多いという
 ▼日本人の拾い物が海外の落とし主に戻った事例も話題に上る。14年にはアメリカの農場で男性の落としたスマートフォンが輸入穀物に紛れて北海道の製粉所に到着。善意のリレーで持ち主に届けられたと話題になった
 ▼筆者も最近、落としたかばんが手元に戻る経験をした。警察に届けた人は名乗らず謝礼も求めなかった。財布の中身も含め損害はなく幸運を喜んだ
 ▼日本では「拾い物は交番に届ける」との教育が浸透しているとされるが、手間や時間を惜しまず警察に届ける人の善意に感謝したい。とはいえ落とし物をしないことが肝心。最近は個人情報の詰まったスマートフォンなど不便だけでは済まないものも多い
 ▼筆者は泥酔してかばんを忘れたが、沖縄では最近、アルコール依存症など問題を引き起こす可能性の高い「危険な飲酒」者が増えているとの指摘もある。落とし物はもちろん、過度な飲酒で「自分」を忘れてしまわないよう気を付けたい。